独白



 実のところ、僕は周りが思っているほど、自分の運命を悲観してはいな い。


 確かにテッドのことはとても心配で仕方ないし、グレミオの死はショックで、今でも、もうあの笑顔も自慢のシチューもお目にかかれないなんて信じられない でいる。その証拠に、たまにごく自然に「グレミオ」って呼びそうになる。
 寂しいし、悲しいし……でも。
 それでも僕は、周りが思っているほどには、自分の運命を悲観してはいないんだ。
 僕は自分がどういう立場にいて、何をしているのか自覚してる。クレオもパーンも、そして逝ってしまったグレミオも、帝国を忘れられないでいた。父さんを 忘れられないでいた。でも僕は生半可な覚悟で解放軍に入り、オデッサさんの跡を継いだわけじゃない。
 だから父さんと戦わなければならないと知った時も、まぁ仕方ないかぐらいにしか思わなかった。
 僕は帝国の状況をどうにかしたいと思っていたし、父さんは国民の姿に背を向けてバルバロッサ皇帝への忠誠を貫いただけ。もしかしたら父さんは、いつか皇 帝が気付いてくれるかもしれないと信じているのかもしれないけど、すぐに動くわけではないのだから、見ていないのと同じだ。
 帝国からすれば、僕達解放軍は反乱軍という名の大罪者。話し合う余地などないから、力で争うしかない。だから僕と父さんのことは仕方ないんだ。考えるこ とがあまりに違う。父さんはクワンダ将軍やミルイヒ将軍と違って頑なだし。
 正直父さんと敵対してしまったことは、とても残念でならない。できることなら味方になってほしかった。でも父さんはそれを潔しとはしなかった。バルバ ロッサ皇帝に忠実であることが役目だと思ってるんだろう。
 まぁいいさ。人として、帝国五将軍の一人として、そういう選択もアリなんだろうさ。本当に残念だけど。
 残念で……軽蔑すらしてしまう。我が父ながら、そんな選択をしてしまうなんて。苦しんでいる人達がたくさんいるというのに、見て見ぬフリを決め 込むなんて。人として、将軍としては良くても、父としては微妙だ。
 だから父さんと刃を交えることになっても、あまり動揺はしないと思う。きっと僕は平気で父さんを手にかけるんだろうな(勝てるかどうかはとりあえず置い といて)。


     そんなわけで、僕は周りが思って いるほど、自分の運命を悲観してはいないんだ。
 テッドのことは諦めてはいないし、いずれはグレミオのことも受け入れるんだろう。
 僕は解放軍の一員で、リーダーとして皆を率いて戦をしている。
 分かってるんだ。リーダーがなんなのか、戦がどんなものなのか。
 だから明日、火炎槍を使って父さんの部隊を殲滅することにためらいはないし、父さんの死はグレミオより簡単に受け入れると思う。

 そして    この先もずっと、僕は解放 軍リーダーとして歩んでいくんだ。


 戦争が終わる、その時まで。



END

以前作った坊ちゃんコピー本『道』より。
ウチの坊ちゃんはこんなカンジ。