幻想水滸伝

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読んでいただく前に

『絆』は電撃文庫出版の幻水短編集Aに収録されている『風待ちの竜』を、
宮代なりに書いた小説です。
いろいろ思うところがあったので……
そういうのが許せる方のみ、読んでいただきますようお願い致します。
読んだ後に不快を覚えられても、責任取れません。

大丈夫な方は、スクロール!























 窓から見える青空は何処までも青く、吹き込んでくる風はとても穏やかだった。
時折聞こえる奇妙は鳴声は耳慣れたものではないが、何があげているのかは考えなくても分かる。
 自分は全く踏み入れたことのない領域にいるのだと実感させられる。ひどく落ち着かない気持ちで、ハンフリーはここの主が来るのを待っていた。
 ここは竜洞騎士団の砦の応接室。通されてからまださほど時間は経っていないが、早くこの場から立ち去りたい思いに駆らて仕方がない。もちろん用事があって今ここにいるのだから、それを済ませるまでは帰れないのだが。
 ハンフリーは足元に置いていた袋を見下ろした。この中には『現実』が入っている。澄んだ青空も、穏やかな風も一瞬でかき消すような、冷たい現実が。その全てを知った時、団長はどう思うだろうか。そして騎士団にはどんな風が吹くのだろう……
 一瞬、脳裏に腐敗しかけた死体の映像が浮かび――
「お待たせしてしまった。申し訳ない」
 そう言いながら現れたのは、銀色の長い髪を一つに束ねた、背の高い痩身の男だった。頭には竜の翼を模したサークレットをはめている。傍目からは30前後に見えるのだが……ハンフリーはソファから立ち上がりながら、この人物が団長かと内心驚いていた。想像していたよりずっと若く見えたからだ。
「竜洞騎士団第二階位、団長のヨシュアです」
 竜洞騎士団の団長を務める者には、代々真の紋章の一つである“竜の紋章”が受け継がれる。故に外見年齢と実年齢が、何十年何百年という単位で一致しないのは知っている。
 しかしヨシュアの外見が若いということは、それだけ若い時分に団長になったということだ。それはヨシュアという人物が、人の上に立つ者として、そしてもちろん竜騎士として、いかに優れているかを表していると言って良い。
「赤月帝国北方警備第三大隊所属、第08小隊、隊長のハンフリー=ミンツと申します。突然の訪問に応じて下さり、感謝致します」
「こちらこそ、遠路はるばるお越し下さり感謝します。歓迎しますよ」
 ……相手のことをどうこう思ったことはとりあえず心の中に押し留め、表情を変えることなくハンフリーは差し出された手を握り返す。
 ふとヨシュアが自分をまじまじと見ていることに気が付いた。
「小隊長というからどんな方かと思ったら、ずいぶんお若いのだね」
「若く、見えますか」
 思わずそう聞き返していた。今まで何処へ行っても歳相応に見られたことなどなかったからだ。まだ21なのだが、大概10くらいプラスされる。
 ヨシュアは吹き出した。
「違うのかい? 私には二十歳前半に見えるが」
 もう少し厳密に言えば“二十歳前後”なのだが。しかしそれでも二十歳前半と答える辺り、さすが真の紋章所持者と言うべきか。長く生きているだけあって、人を見る目が養われているのだろう。
「21です」
「ほう、21で小隊長か。すごいね」
「恐れ入ります」
 実際は仲のいい者同士が寄り集まってできた小隊で、いつの間にか仲間から隊長扱いされているだけなのだが。
「ああ、でももしかしたら少し多めに見られるかもしれないね。見た目も大人びているし、落ち着いた雰囲気だしね」
 ……結局は見えるんじゃないか。そう思いつつも、心の中に留めておく。言葉も選んでくれていることだし。
「ただ、君から放たれるオーラ、と言うか……雰囲気とはまた違ったもの、が若いから。この感じを説明するといつも首をかしげられるんだが」
 多分、二百余年という年月を生きた者が察知できるものなのだろう。たかが二十年そこらしか生きていない自分が理解できなくて当然だ。
 当然……なのだが、それ故になんと言葉を返したらいいのか分からず、ハンフリーは黙するしかなかった。
 その様子に気付いたのだろう。ヨシュアは沈黙を気にする風もなく、にこりと微笑んだ。そして二人共、まだ立ったままでいることに気付き、ハンフリーに席をすすめた。
「申し訳ない、立ったままで。どうぞお掛け下さい」
 その穏やかな物言いに、ハンフリーは思わず腰を降ろしそうになった。しかし体が動く前に我に返って留まった。
「いえ、このままで構いません」
 初対面だというのに、親しみすら感じさせるヨシュアの雰囲気は、団長として長い間生きてきた故の偉大な姿なのかもしれない。懐が深いというか、器が大きいというか。うっかりしていると飲み込まれてしまいそうになる。礼を欠くような真似は絶対に避けねばならない。
 自分は突然押しかけた招かれざる客で、しかもただの小隊長。対するヨシュアは一国の城主とも言うべき騎士団長。分をわきまえねばならない。
 しかしそんなハンフリーの心情を知ってか知らずか、ヨシュアは笑った。
「立たれたままでは私が落ち着かない。どうか座って下さい」
「……では、失礼します」
 そこまで言われては、座らぬ方が失礼というもの。ハンフリーは一礼してソファに腰を下ろした。合わせてヨシュアも座る。
「さて、我等が同朋の遺品を持ってきて下さったとのことだが」
 ヨシュアに話を切り出され、ハンフリーは「はい」と答えて足元の袋の口を開けた。中に入っている物を静かにテーブルの上に並べる。
 竜騎士のサークレット。
 二つの指輪をトップにしたペンダントと、それで束ねられた金色の遺髪。
 薄汚れた銀色の竜の鱗一枚。
「……以上です」
 ヨシュアが出された物を一通り見渡し、やがてサークレットを手に取って内側を覗き込んだ。
 そこには“アディ”と刻まれている。それと階級と思しき刻印も。
 それをしばらく見つめ、ヨシュアはため息をついて目を離した。
「確かにこれは、竜騎士第五階位アディの物だ。そしてその鱗はアディの騎竜スターリングの物だろう」
 そう告げて再びサークレットに視線を落としたヨシュアの目からは、悲しみとやりきれぬ思いが見て取れた。ハンフリーはどう言葉を紡いだらいいか分からず、黙り込むしかなかった。
 やがてヨシュアはおもむろに立ち上がった。何事かと目で追いかけると、彼は扉を開けて顔を出し、廊下で待機していた部下に何かを伝えてすぐソファに戻った。
「経緯を聞かせてもらえるだろうか」
 ヨシュアが部下に何を言っていたのか気になったが、余所者がいちいち確認するのは躊躇われた。ハンフリーはおとなしく求められるがまま、遺品を手に入れた経緯を語り始めた。



 事の始まりは、自分が駐屯する砦の近くの村人からの訴えからだった。
 曰く、狩猟場である山の洞窟に巨大な魔物が住み着いたのだそうだ。今のところはまだなんの被害もないが、不安で仕方ないという。
 そこで砦で兵を出し、退治することにした。
 しかし多人数向かわせても、狭い洞窟の中では無駄に人員を失うだけ。故に一個小隊が向かうことになり、白羽の矢が当たったのが第08小隊――つまりハンフリーの隊だったのだ。
 そして向かった先に居たのが、アンデットと化した銀の竜と、既に死んでいた女竜騎士アディ。何故竜騎士と竜が致命傷を負ったのかは不明だが、おそらく死してなお、騎竜は主を守ろうとしていたのだろう。たとえその守るべき者が屍であったとしても。
 ハンフリーと仲間達はその場で騎士と竜に火をかけ、弔ってやった。
 煙は洞窟の外へと流れ、高く空へと昇っていった――



 ヨシュアは静かに話を聞いていた。ハンフリーが話終わっても、しばらく黙り込んでいた。
 空は相変わらず青く、風は穏やかで、時折鳥や竜の鳴声が聞こえてくる。しかし部屋を包む空気は重く、冷たかった。
 でも“本当の真実”はこんなものでは済まないことが、ハンフリーには分かっていた。それをここに持ち込むべきか否か……ハンフリーはまだ悩んでいた。
 実は今の話には後日談がある。しかしそれを話すにはリスクがあった。帝国と騎士団の関係を揺るがしかねないリスクが。己の身をわきまえるのであれば、言うべきではない。しかしもう一人の自分が心の中で叫ぶ。これでいいのか、と――
 突然ノックの音で沈黙が破られた。ヨシュアが「どうぞ」と応えると、竜騎士が現れて「連れてきました」と告げる。
「ちょっと失礼」
 弱々しい微笑みを浮かべ、ヨシュアは席を立った。
 先程と同じようにハンフリーが視線で姿を追うと、開けたままの戸口から金髪の少女の姿が見えた。すぐにそれはヨシュアによって閉じられた扉に遮られて見えなくなったが……
 しばらくすると、少女の叫び声が聞こえた。嘘、とか、嫌、とか。そしてそれらは泣き声に変わる。子供特有の、大きくて、張り裂けるような泣き声。
 もしかしてアディの娘か何かだろうかと考える。アディの亡骸は腐敗が進んでいたが、あの顔立ちなら幼い子供が一人や二人いてもおかしくはない。
 家族。死してなお、主を守ろうとした竜。竜騎士。竜洞騎士団――
 いつの間にかハンフリーの思いは帝国の地にあった。後に継承戦争と呼ばれる戦を始めたばかりの、己の祖国。守りたいもの、守るべき人。そして自分が欲する未来。
 ――答は最初からあったはずなのに、目を背けようとしている自分に気が付いた。進むべき道は決まっている。
 ヨシュアが戻ってきて、ソファにどかりと腰を下ろした。
「あの少女は……」
 ハンフリーが尋ねると、娘だと返ってきた。
「アディの娘のミリア。先日見習いを脱したばかりの準竜騎士だ。アディの自慢の娘だった。事実を伝えなければならないのは解っているが、悲しむ姿を見るのはやはり忍びないな」
「……」
「ああ、そうだ。後で簡易的なものだが、葬送の儀を執り行うことにした。あなた方もぜひ参加してほしい」
 そう告げるヨシュアの顔には、思わぬ悲報に打ちひしがれた感はあるが、それでも友好的な笑顔が浮かんでいた。
 それを見て――ハンフリーは覚悟を決めた。
「折角のお話ですが、おそらく無理です」
「何故?」
「我々にはその資格がない」
 ヨシュアは首をかしげた。
「何故かな? あなた方はスターリングを解放し、アディと共に弔ってくれただけではなく、こうして遺品まで届けてくれた。資格なら充分すぎるほどにあると思うが……」
 ハンフリーは答えず、再び袋に手を入れて一本の細い棒を出した。
 棒ではない。所々に赤黒く乾いた血がこびり付いた矢。それをヨシュアに渡す。
「これは?」
「アディ殿の胸に刺さっていた物です。それのせいで命を落とすことになったと思われます」
「……で、これが何か?」
「矢尻に焼印があるのがお分かり戴けますか」
 ヨシュアは矢尻に目を凝らす。弓の弦を引っかける為の溝が入っているので分かりにくいが、確かに何かのマークが押されている。
「それは私達駐屯する砦が矢を大量に生産した時に押す所有印です。所属する大隊ごとに印の形が違います」
 ヨシュアはすぐに理解した。理解して、表情を硬くした。
「それはつまり」
「アディ殿と騎竜スターリングを討ったのが、我々の同胞だということです」





 ヨシュアは己の表情がだんだん険しくなっていくのが分かった。そして、あえてそれを止めようとはしなかった。表情の変わったヨシュアを見て、目の前の客人は元々できていた眉間のシワを更に深くする。だが覚悟していたのだろう、怯んだ様子はなかった。
「矢を射た者が砦の酒場で自慢げに話しているのを、私の仲間が聞いていたので確かです」
「……何故それを話す? 黙っていれば騎士団の恩人として帰れたはずだ。それなのにわざわざ帝国と騎士団の友好関係に影を落とすようなことを」
 アディとスターリングを殺した者に対しては怒りが湧くし、その同僚であるこのハンフリーという青年の見方も変わったが、かといって感情を彼にぶつけるのはお門違いだと分かっている。とりあえず落ち着いて、頭に浮かんだ疑問を投げかけてみた。
「……現在、帝国で内部分裂があるのはご存知ですね?」
「ああ。偵察に出した竜騎士から報告を受けているし、ゲオルグ……今はゲイル皇帝か。彼から協力するよう要請もあった。まだ返事を出してはいないが……」
 前皇の遺言により、帝位に就いたバルバロッサ=ルーグナー。それを廃嫡裁判によって叔父のゲイルが奪ったことにより国の勢力が二分。それが戦争に発展してからまだ日が浅い。
「ゲイル皇帝が即位してから、国内は厳しい状況に陥りました。相次ぐ官僚の汚職。領主は民から税を絞り取って私腹を肥やすようになり、軍はモラルが低下して賊如き振る舞いをする始末。今回の件も、そんな一人の兵士がやったことです」
 ヨシュアはため息をついた。
「……帝国に偵察に出した竜騎士が、既に一騎やられている」
 そして打ち明けた話に、ハンフリーは顔をしかめた。
「なかなか戻らないその騎士を捜しに出た騎士も重傷を負って戻り、間もなく息を引き取った。主をなくした竜は寂しさのあまり長くは生きられず、後を追うように……そして事実解明のために出たアディとスターリングも、こんな形で帰ってきた……」
 ヨシュアは竜の鱗を手に取り、惜しむように表面を撫でた。この冷たい感触を味わうのはもう何度目か――
「……竜は、薬として高値で取引されるそうですね」
「……その通りだ」
「それに、強大な魔物を仕留めることができれば、それは武器を振るう者にとって誉となる。故にスターリングは狙われたのでしょう」
「だろうな……」
「そして狙ったのが我々の同僚なのだから、私達が責められても仕方のないこと」
「そうだな……君を信用できなくなる。だが」
 ヨシュアはハンフリーの目を真正面から見据えた。
「君は私に打ち明けた。何故だ? なんの得もあるまい」
 これからの話で、おそらくハンフリーが何を考えているかが分かるはずだ。さて、どんな答が返ってくるのか――
「我々の北の砦はカシム=ハジル将軍に属します。先日そのカシム将軍が、バルバロッサ卿に付くことを決定しました」
「ほう、あの青き月のカシム殿が。それは衝撃的な話だな」
 帝国を代表する将軍の一人、カシム=ハジルが現皇帝に反旗をひるがえしたとなれば、軍はますます混乱し、争いが激しくなるだろう。
「しかし北の砦はゲイル皇帝に従うことになりました。軍中枢から離れた末端の部隊は統率を嫌い、自由を求めたようです。皇帝がゲイル卿である限り、規律に縛られることはないと考えたのでしょう」
「では君達もゲイル皇帝側につくのか」
 それを潔しとするようには見えないが。それにゲイル側につけばますます真実を話したハンフリーにメリットがなくなる。『上に従順な、でも正義感』などという矛盾した男とは到底思えない。それではただの阿呆だ。
「……私達はこの後砦には戻らずに、直接モラビア城へ向かうつもりです。その準備もしてきています」
 やはりな、とヨシュアは思った。
「では……我々にバルバロッサ卿につけ、と?」
 考えるに、ハンフリーのメリットはそれしかない。
 ゲイル皇帝が政を顧みず帝位だけに固執していることも、バルバロッサ卿が帝位に就いた暁には国内を正常化させると謳っていることも、偵察から報告を受けてヨシュアは知っていた。そしてバルバロッサ卿はそれを実現できる人物であるらしいということも。国や民のことを考える者はバルバロッサ卿の下に集まるはずだ。
 そして目の前の客人もその一人というわけだ。
「いいえ」
「えっ?」
 思わぬ返事にヨシュアは己の耳を疑った。
 竜は充分すぎる程の戦力を有する。一騎だけでも、一個中隊を殲滅させることくらい造作もないこと。それなのにこの男は味方につくことを望んでいないという。ヨシュアはハンフリーが何を考えているのかますます分からなくなって困惑した。
「私は……今回の戦争に、介入してほしくはない……」
 ハンフリーの目線が弱々しく下に向けられた。
「私は、竜洞騎士団のことをよく知りません……しかし、主を必死で……それこそ死んでも守ろうとしたスターリングを見て、騎士と騎竜が主従以上の強い絆で結ばれていることを思い知らされました。竜はあなた達にとって、友……もしくは家族のような存在なのでしょう……」
「……その通りだ」
 そしてヨシュアにとって、騎士も竜も我が子同然。だから一人一匹であっても、失えば身を引き裂かれんばかりの悲しみに襲われる。それがここ半年でアディを含め三人三匹亡くなった。正直ヨシュアは現実を呪いたかった。
「私はあなた方に、家族を戦争に駆り出してほしくはない……そして、やむを得ず駆り出すあなた方を見たくはない……だから……」
 ヨシュアは言葉を失った。ハンフリーが社交辞令ではなく、本心からそう言っているのだと分かったから、尚更何も言えなかった。
 この男はなんて――
 ハンフリーは顔を上げた。
「これは完全に内輪の問題です。いくらこの竜洞騎士団領が帝国の領土であっても、騎士団の自治が認められている。自ら火の粉を被りに行く必要は、ないと……思うのですが……」
 実際にはそう簡単に済む問題ではない。いずれはどちらかに組みしなければならないだろう。多分、それはハンフリーにも分かっている。
 しかしそれでもこの男は、自分の気持ちを伝えずにはいられなかったのだ。己の保身のためではなく、ただ、竜と竜騎士のことを思って。
「――ふっ……くっくっくっく……」
「?」
「ふっふっふっ……あっはははははは!」
「!?」
 突然ヨシュアが笑い出したので、ハンフリーはかなり驚いたようだった。いぶかしげに眉をひそめて硬直している。
 しかしヨシュアはしばらく笑いを止められなかった。おかしくて、おかしくて、とても愉快でたまらなかった。
 ああ、なんて。
 なんて、おかしな男だろう。
 自分が参加する戦争を有利に進ませるより、よく知りもしない騎士団のためを考えるとは。優しすぎるのか、天然なのか、戦争を甘く見ている馬鹿なのか。いずれにせよ、おかしくてたまらない。
「お前っ、くっくっくっ、面白い男だなっ……ふっふふふっ」
 褒められているのかけなされているのか分からないのだろう。ハンフリーは困惑しきった複雑な顔をした。
「いや……褒めてるんだ……ふふふっ……いや、いや、失礼。お気遣い感謝するよ」
「……は……いえ……」
 ハンフリーはまだ怪訝そうな顔をしている。
「ハンフリー殿」
「はい」
 それでもヨシュアが改めて名を呼べば、姿勢を正して返事をした。
「やはり儀式に参加していただきたい」
「ヨシュア殿」
「恩を受け、そこまで我々のことを考えて下さった御仁に非礼を働くわけにはいかない。ロクに感謝もできん集団と思われては、騎士の名折れだしな」
「いえ、決してそのようなことは……」
 しかしヨシュアは首を振って微笑んだ。
「どうか歓迎させてくれ。今夜は泊まっていくといい。部屋と食事の他に上等な酒も準備させよう……あなた方は騎士団の友だ」
 そして深く頭を下げた。
「心から感謝する。ありがとう――」





END
以前作ったコピー本『友』より、『絆』でした。
実は続きがあったりするのです。

ちなみに、私が『風待ちの竜』に納得できない理由について。
@ヨシュアはあんなに精神的に弱くないと思います。
A継承戦争は解放戦争終結時の11年前だというのに、
ミリアが見習いになったばかりで、ハンフリーが既にオッサンなのはおかしいと思います。
そんなワケで考えついた小説がコレなのです。
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