ACE

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 ただひたすらにスポーツマンで在り続けたリーガー。

 ただひらすらに、正々堂々全力で戦い続けたリーガー。



 その赤い姿が。

 マウンドに沈んだ。










「兄貴」
 フットはうかがうように長兄を呼んだ。アームは振り向かず、ずっとモニターを凝視したまま。
 フットもアームも、マグナムエースの様子が前々からおかしいとは思っていた。常に全力で戦ってきたツケが回ってきただけなのか、それともファイター兄弟の存在が彼の心を脅かしているのか、分からないけれども。
 十郎太に44ソニックonファイヤーを打ち砕かれ、そして――
「……」
 マスクもアームと同じようにモニターを見ていた。マグナムエースが担架で退場していく。シルバーキャッスルの仲間達がそれを心配そうに見守っているのが映った。
「ホスピタルへ行ってみるのか?」
 何も言わぬアームにフットが言う。アームは首を振った。
「いや。それになんの意味がある?」
「……それもそうだな」
 そう、これはマグナムエース個人の問題なのだ。もはや部外者が介入できる余地はないし、元々マグナムエースはああ見えてかなりの頑固者である。彼自身は他者に問答無用で干渉するが、他者からの干渉を受け付けない節があった。
 ただひたすらにスポーツマンで在り続けたリーガー。
 ただひらすらに、正々堂々全力で戦い続けたリーガー。
 本当なら知るはずのない真実を知ってしまったが故の、ひたむきさ。情熱。
 ――ここで、散るのかと、マスクは思った。
 あの“破滅の縁”で、強烈なまでの存在感をこの魂に刻んでおきながら、お前はこんな所で終わるのか。
 これからなんじゃないのか。
 畜生……
「あ、おい、マスク」
 突然きびすを返した末弟を、フットが呼び止める。
「なんか飲み物でも買ってくるわ」
 これ以上こんな無様な光景を見ていたくない。拒絶するように、モニターから離れた。
 どす黒く、冷えた感情が中で渦巻いている。
 もしこれで終わるというのなら、俺は絶対にお前を許さない。
 もしここでお前が立ち上がれなかったら、お前が差し伸べた手なしに立ち上がれなかった俺の立場がなくなる。
 俺は、そんな下等なリーガーじゃない。そんな下等なリーガーになりたくない。
 お前は、そんなリーガーじゃないはずだ。
「マグナムエース、立ちやがれ」
 拳を握り締め、マスクは呟いた。
 まるで祈りのように。

 立て、エース。



END
ネタはサイト開設当初からあったのですが、いろいろ諸事情により今までお蔵入り。
その間に微妙に設定が入れ替わり立ち代わり、いざ書いてみたらメッサ短くなってびっくりだ!
しかもマグナムエースのカリスマ性を言葉で表現し切れなくてがっくし。
……愛の差か……(ぇ)
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