night walkerと今日もゆく

リーガーTOP
 部屋に入るとライトが点いていなかった。
 それでも暗いと感じなかったのは、窓から地上の小さな光が数多入り込んでいたからだ。
 百万ドルの夜景とは誰が言った言葉か。光の花。光の洪水。思わず見とれて声が出なかった。
 ――「失礼します」と言わねばならなかったのに。
「綺麗だろう?」
 部屋の主が、立ち尽くすマスクに言った。
「あ、はい……すみません」
 答えてからしまったと思い、慌てて謝る。クリーツは構わないと笑った。
「この夜景は俺にとって特別でね。見ているといろいろ考える」
 マスクを側に招き寄せ、クリーツはおもむろに語り出した。
「特別?」
 クリーツの横に立ち、マスクは夜景を見下ろしながら聞き返す。クリーツはうなずいた。
「ここは高いだろう? 全てを見下ろすことができる。財団ビルより高い建物はそうそうないからな。……くだらない優越感に捕らわれていたものさ」
「今は?」
「素直に綺麗だと思うよ」
 そう言ってクリーツは穏やかに微笑む。
「……監督に礼を言いに来たんだ。今更なんだけど」
 やっと、マスクはここへ来た理由を告げた。
「礼?」
「アンタがあの時逃がしてくれたから、俺は再びフィールドに立てた。だから」
 改まってクリーツに正対し、
「ありがとうございました」
 深く頭を下げた。
「……頭を上げろ」
 苦笑交じりに命じられ、頭を上げる。
「礼を言わなければならないのは……俺の方だ」
「何故?」
「お前達のお陰で、俺は目が覚めた。だからだ」
 クリーツの視線が再び夜景に向く。
「俺含め昔のダークは、あの地上の光りを見下してきたんだ。だが、あの光の中にこそ、人とリーガーの営みがある。俺はお前達のお陰で、あの中へ入る機会を得た。感謝してもしきれん」
 クリーツはマスクに笑いかけた。
「ありがとう」
「……それはシルバーの奴等に言った方がいいんじゃないか?」
 少し困ったような笑顔でマスクが言い返す。マスクからすれば、シルバーキャッスルがいたから、自分達が変われたのだ。
 しかしクリーツはかぶりを振った。
「いいや。お前達がいたから、俺も影響を受けたんだ。シルバーだって、お前達がいなければ力を発揮できなかっただろう。だから、いいんだ」
「それじゃ、兄貴達に……」
「何故だ?」
「だって……俺は、兄貴達の跡を付いて回っていただけだし……」
「……お前なぁ」
 自身なさそうに答えるマスクにクリーツは苦笑した。
「馬鹿だな。トルネードフォーメーションも、あのチームワークも、お前がいたから成り立ったんだろうが。そんなではゴールドの名が泣くぞ」
 しっかりしろと括を入れれば、マスクは戸惑いながらも「おう!」と応えた。
「やっぱり、アンタには感謝してもしきれねぇよ」
 先程のクリーツの言葉を借り、マスクは言った。
「そうか。では今後の試合で恩を返してくれ。俺も恩返しに全力でサポートすることにしよう」
 クリーツの笑みに、マスクは大きくうなずいた。
「おう!」





END
2007年10月発行のコピー本『Human form Heart.』より。
この二人が好きなんだ!
そして実はずっと以前から書きたかったネタ。
リーガーTOP

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