懲りずに君の名は

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「略すで思い出したんだけどよ」
「今度はなんだよ」
 スカイワープの発言にスタースクリームは露骨に顔をしかめる。
「パーソナルコンピューターがPCなら、スタースクリームはSSになるワケだ」
「……そうだな」
「SSかー。SSって言うと、なんだ?」
 サンダークラッカーがスカイワープに尋ねる。
「ショートストーリーじゃね?」
 答えるスカイワープ。
「っつーか、スタースクリームの略なんだろうが!?」
「スモールショートとかは?」
 スタースクリームのツッコミは無視してサンダークラッカーが言う。
「あー、“らしい”な」
「あはははー」
「また蹴られてーか!?」



「じゃぁさ。レーザーウェーブとサウンドウェーブはそれぞれLWとSWになるよな」
 とサンダークラッカー。
「なんかLWってロサンゼルス(LA)みてぇだな」
 そう言ってスカイワープが笑う。
「Lしか合ってねぇよ」
「ってことは、ロサンウェルズ?」
 やはりスタースクリームのツッコミは無視するサンダークラッカー。
「じゃぁレーザーウェーブが街造ったらその名前にしようぜ」
 名案だとばかりにスカイワープが言い、サンダークラッカーはうなずいた。
「賛成」
「……」
 ここに意味不明な可決がなされた。スタースクリームは呆れ果ててツッこむのをやめた。
 っつーか、それを言うならロスワンゼルスじゃねぇのか……



「お、ちょっと待てよ。サウンドウェーブがSWってことは、俺と同じじゃねぇか」
 スカイワープ=SW。
「マジで。やっべ、俺サウンドウェーブだよ」
「スゲーな、お前サウンドウェーブか」
「なんでだよ。意味分かんねぇよ」
 何故か盛り上がる二人にスタースクリームがとりあえずツッこんでおく。案の定無視された。
「じゃぁお前等カセットロンな」
「なら俺コンドル!」
 すかさず主張したのは、驚くことにスタースクリームである。
「俺ほどではないが、ヤツは優秀だからな。俺が特別配役されてやる」
 ここで変なニューリーダー病が発症したようだ。
「じゃぁ、俺はジャガーか」
 とサンダークラッカー。
「いやいやいや、そこはパズソーだろ! 存在感薄いのも似てるしな」
 直後、スタースクリームの後頭部にミサイルが炸裂した。
「うぉッ!」
 スタースクリームは前のめりに倒れかけたがなんとか踏ん張り、何事かと背後を振り返る。
「……」
 サウンドウェーブの肩からパズソーが目を光らせて睨んでいた。ついでにサウンドウェーブも赤いバイザーの下で赤い目を光らせている。そりゃもう、ビ カーッ!と。
「ひッ」
 途端に怖気が走り、ジェットロンは身を寄せ合って一人と一羽からすごすごと離れた。



「――その話の流れからすると、俺はSCになるな」
「あぁ、そうなるな」
「ちょっと待て」
 スタースクリームはこのまま話を進めようとする二人を咄嗟に止めた。
「サンダークラッカー、今なんて言った?」
「その話の流れからすると、俺はSCになるな」
「SC?」
「サンダークラッカーだからSCだろ」
「大丈夫か、スタスク?」
「略すな須川。おい、サンダークラッカー、一回自分の名前言ってみろ」
「サンダークラッカー」
 スタースクリームは首をかしげた。
「……名前のスペルを言ってみろ」
「サ・ン・ダ・ア・ク・ラ・ッ・カ・ア」
「英語でだ!」
「s-a-n-d-a」
「ローマ字じゃねぇよ!!」
「えぇ? んーと、s-u-n-d-e-r-c-r-a-c-k-e-rか?」
「……」
 スタースクリームは黙り込んだ。何やら考える仕草を見せる。
「なんでぇ、一体」
 首をかしげるサンダークラッカーとスカイワープ。
 しばし後にスタースクリームは口を開いた。
「Thunderじゃないのか、お前の名前」
「え」
「T-h-u-n-d-e-rだろ」
 途端にサンダークラッカーとスカイワープが顔を見合わせる。
「あー、言われてみるとそうかもしれないな」
 とサンダークラッカー。
「そうかもしれない、じゃなくて、そうなんだよ。発音がそうだろ」
 thunderの出だしは[θ]で、sunderは[s]である。サンダークラッカーはしばらくthunder/sunderと繰り返す。
「???」
 そうしているうちにどっちが正しいのか更に分からなくなり、サンダークラッカーはサウンドウェーブに声をかえた。
「おーい、ちょっと俺の名前言ってみてくれねぇか?」
「……Thundercracker」
「ほれ見ろ!」
 どうだとばかりにスタースクリームが声を張り上げる。
「そうか……俺はThundercrackerだったのか……」
「お前達、今度は何を話しておる」
 そこにメガトロンが現れた。
「メガトロン様、聞いて下さい! 俺、サンダークラッカーだったんですよ!」
「何?」
 経緯を知らないメガトロンはサンダークラッカーの言葉を理解できない。
「何を今更言っておる。ヒューズでもイッたか?」
「それは俺の専売特許ですよ、メガトロン様!」
 そう言ってサンダークラッカーは浮かれながら部屋を飛び出していった。きっと他のデストロン達に言いに行ったのだろう。
「なんなのだ一体」
「奴の名前がthunderなのかsunderなのかって話ですよ」
 両手を広げ、肩をすくめながらスタースクリームが答える。
「何を馬鹿なことを」
「ですよねぇ」

「sunderに決まっておろう」
「!?」





おしまい。










「……ちなみにTCって何よ?」
 とフレンジー。
「テクニシャン、とか?」
 ランブルが答える。
「絶対違うな」
「違うな」
「……なんのテクニシャンだと」
「それは野暮ってもんだぜサウンドウェーブ」
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