計算

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 アーマーガイストは部屋の隅に小さな紙クズが落ちているのを見つけた。
「なんだこりゃ?」
 爪で器用につまみ上げ、見る。

『マリコさんが一個100円のリンゴを六つ買い、1000円出しました。お釣りはいくらでしょう?』

「あっ、ソレ! まだ残ってやがったのか!」
 紙を覗き込んだホーンガイストが叫ぶ。
 いつぞやの夏の宝を盗んだ時に入っていた『宿題』の一枚だ。
「一個100円のリンゴを六つ……1000円出した……」
「人間って分からねぇな! こいつのドコが宝なんだぁ?」
 考え始めたアーマーの横で、解けなかったのを思い出し、ホーンはイラ立たしげにぼやく。
 ――『宿題』が宝と思っている子供など、いないに等しいだろう。
「はっ。てめぇにゃ、そのレベルがお似合いだな!」
 プテラガイストがお決まりにホーンを嘲笑えば、当然ホーンも怒り出す。
「なんだと!? じゃぁ、てめぇは分かんのかよ!」
「当たり前だ!てめぇの頭と一緒にすんな!」
「なー、リンゴってなんだー?」
「てめぇ、少し頭いいからって図に乗りやがって!」
「頭いいって認めるんだな?」
 サンダーガイストの疑問なぞ完全に無視してプテラとホーンは口論を繰り広げる。
「少しだ少し!! だが最後にモノを言うのは結果だ! 頭が良くてもお宝を盗み出せねぇんじゃ、しょうがねぇよなぁ?」
「てめぇこそ失敗してばっかりじゃねぇか!」
「なんだと!? 俺様をてめぇと一緒にするんじゃねぇぞ!!」
「俺だっててめぇと一緒にされるなんざゴメンだ!」
 白熱するプテラとホーンのバトル。その側でサンダーはリンゴとは何か? と繰り返す。アーマーは完全に問題に夢中だ。
 そこへコウモリが現れた。
「うるさーい!! くだらないケンカをしているヒマがあるなら、宝を探すかエクスカイザー達を倒す手段でも考えろ!! ……と、ダイノガイスト様がおっしゃっておられる」
 毎度のことながら本当にダイノガイストの言葉なのかコウモリの私情なのかは不明だが、もっとものことなので二人はケンカを中断させた。代わりにホーンが、
「てめぇはこれ解けんのかよ」
 と言ってプリントをコウモリに見せる。
「……」
 問題文を読むなり、コウモリはげんなりした。そして四将達を見回す。
 コウモリは悩んだ。問題に、ではなく、四将達に。ガイスターのメンバーがこんなバカばっかりでいいのか? と。
 プテラは解けないはずはないだろうが、ホーンは分からなかったに違いない。
 アーマーは地面にたくさんの線を引いて「686……687……」と呟いている。コイツ、601から1000まで線を引いて、それを1から数え直すつもりだ。
 サンダーなんか「リンゴってなんだー?」と、それ以前の問題。
 コウモリは頭痛を覚え、ヘロヘロとダイノガイストの元へと戻っていった。
「なんでぇ、あのヤロウも分かんねぇんじゃねぇか」
 自分一人がバカではいと、ホーンは内心嬉しそうに吐き捨てる。
 しかしプテラがすかさず否定した。
「いいや。こんな問題も解けねぇのかと呆れたんだよ」
 当然バトルは再開された。
「てめぇ、ヒトがおとなしくしてりゃ、調子に乗りやがって!」
「ああ? 本当のことを言っただけだろうが」
「なー、リンゴってなんだー?」
「なんだと!? もう一回言ってみろ!」
「リンゴー」
「あーあ、言ってやる。ホーン、お前は脳足りんなんだよ!」
「リンゴってなんだー?」
「言いやがったな!!」
「言ってみろって、てめぇがいったんじゃねぇか」
「リンゴ」
「うるせぇボケ!!」
「取り込み中だ、後にしろクソッたれ! …………あ」
 叫んですぐ、二人は自分の失言に気付いたが。
「ボケ……クソッたれ……」
 後の祭り。サンダーの目が妖しく光る。
「俺はボケでもクソッたれでもねえ――――――――っ!!」










「ぎゃ――――――――――――――――――っ!」


 プテラとホーンの断末魔はダイノガイストの所まで鮮明に響いた。
「ダイノガイスト様……ガイスターの四将は本当に奴等でいいんですか……?」
 コウモリが主を見上げると、ダイノガイストは既に頭を抱えてうなだれていた。
 ――言うな。俺が一番疑問に思っているのだ。
 今までは力任せでどうにでもなっていたから意識することはなかったが、地球に来てからは何故か頭を使わなければならなくなり、結果、四将の弱点……というか欠点が浮き彫りに。
 ガイスターの地球侵略で一番被害を被っているのは、実は地球人ではなく、ダイノガイストかもしれない……


「分かった! 答は400円だ!!」


 アーマーの嬉しそうな声が基地内にこだまする。引きまくった線を、見事400まで数えきったようだ。
 コウモリとダイノガイストは、そろって長ーいため息をついた……



END
エクスカイザー初の小説は、主人公達をそっちのけでガイスター物に。
好きだなぁガイスター。
そして彼等はこういうノリがいい。
第二話で彼等を見た時、ああなんて可愛らしい敵なんだ、と感動しましたよ。
ギャグな敵は大好きです!
まぁ、一番LOVEはダイノガイスト様なんですけどね。次がサンダー。

ちなみにこの話、続きます。

『リンゴ狩り』へGO!

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