リンゴ狩り

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「……まぁ、確かにリンゴってなんだか分からねぇよな」
 壁に突き刺さったクチバシを引き抜いてプテラが言う。
「リンゴってなんだー?」
 自分が先程まで暴れていたことはもう頭にないのか、サンダーがのんきに首をかしげた。
 情報ならTVだと、アーマーがモニターを操作する。かちゃかちゃとチャンネルを回していると、偶然テレビにリンゴの文字を見つけた。
『私は今、リンゴの名産地に来ていまーす。今日はリンゴ栽培暦60年の、青森さんの農園からお送りしまーす』
 プテラに「アイドルはもっと若い奴だ」と言われたリポーターが、にこやかに話している。隣には70代くらいのおじいさんが立っていた。
『こんにちは青森さん。さっそくですが、今年のリンゴはいかがですか?』
『うむ。このまま順調にいけば、最高のリンゴをお届けできる!』
『それは楽しみですね! 青森さんにとってリンゴとはなんですか?』
『リンゴはワシの人生! ワシの宝じゃ!!』

 ――次の目標決定。

「あの赤くて丸いヤツがリンゴだな!?」
 ホーンが俄然やる気を出した。
「リンゴー。リンゴー。俺取るー」
 サンダーも行く気満々だ。
「俺も行ってみようかなぁ」
 アーマーもリンゴに興味津々。
 プテラは少し考えていた。ダイノガイスト様の命令でもないのにホーンと同じモノを探しに行くのは癪だった。
「取ってきても、てめぇには分けてやらねぇからな。サンダー、アーマー、やるなよ」
「……」
 ホーンの宣言にプテラは出撃を決めた。正直リンゴは気になる。しかしホーンのおこぼれにあずかるのは絶対に嫌だ。


 こうして四将はリンゴ狩りに出かけた。
 もちろん街に。
 しかし彼等は知らない。
 リンゴがいつ“お届け”されるのかを。

 今は、夏。





 ドゴーン
「うおらぁっ!! リンゴは何処だぁ!? コレか? コレか? えーい、めんどくせぇ、そこら辺のモノ皆持って帰りゃいいだろ!」
 果物持ってホーン撤収。
「……」
 店の床に大きく空いた穴を見下ろし、店員はいろいろと何か言いいたげな顔をしていたが、結局口からはため息だけを吐き出した。



 ズガーン
「リンゴー!! あったぁ!」
 たくさんの色とりどりの果物を見つけ、サンダーご機嫌。
 しかし。
「それ、食べ物じゃないから」
「あ?」
「それ、ディスプレイ用だから」
 床の穴からにゅっと出てきた恐竜の長首と対面した店員は冷静に返す。
「……リンゴ」
「だから、食べれないの」
「俺、食べる!」
 いや、本物にしろ食べちゃダメだろ。
「食べてもいいけど、マズイよ」
「……マズイ?」
「食べ物じゃないから」
「でもリンゴ!」
 見た目がリンゴゆえに、本物とオブジェの違いがサンダーには分からない。
「だーかーらー、食べ物じゃ……」
 ここで店員はハッと気付き。
「これはリンゴに見えるけど、リンゴじゃないの」
「……リンゴ、じゃない?」
「そう」
「じゃ、いらない」
 言うが早いか長首は穴へと引っ込んで見えなくなった。
「ガイスターはリンゴを探しているのか……でもなぁ」



 ボゴーン
「リンゴ、リンゴ……おっ、コレか?」
 アーマーは赤くて丸い物を見つけ、しげしげと眺める。
「赤くて……丸い……よし」
 嬉しそうにソレをかき集め、アーマーは穴へ消えた。
「……リンゴ?」
 虚しく落ちた値札を拾い、店員は首をかしげた。



「……なんだと?」
 ちっぽけな人間を見下ろし、プテラは声のトーンを落とした。
 店員はヘビに睨まれたカエルの如く体を硬直させながら、それでもなんとか繰り返した。
「で、ででででですから、ね。今……今は、時期ではございません……カラ……」
「リンゴは、無ぇ、と」
「そっ、そのとーりで、ございます……」
「じゃぁ、時期っていつなんだ?」
「冬……です、ね。あと3、4ヵ月は待たないと……」
「3、4……!?」
 己の調査不足を罵り、プテラは舌打ちした。
 リンゴはダメだ。やはりホーンと同じ物を狙うべきではなかった。プテラは深々とため息をつき、その場を後にした。
 店に新しくできた天窓(枠のみ)を残して。





「うおっ!? リンゴ入ってねぇじゃねぇか!!」
 自分が持ってきた果物の山を引っ掻き回し、ホーンは怒り任せに叫んだ。どんなに捜しても赤くて丸い姿がない。
 その隣ではアーマーが嬉しそうに鼻歌まで歌いながら、赤い山を作っている。
 更にその隣では、リンゴを見つけられなかったサンダーが不貞腐れて寝そべっていた。
「ふんふふんふふーん♪ ふふーふふーん♪」
「あーっ!! てめぇ、ムカツクんだよその鼻歌!!」
「えっ! あ……スマン……」
 普段からホーンとプテラには強く出れないアーマーは素直に謝って沈黙した。
 しかしそれでホーンの虫の居所が収まるワケがない。
「おい、アーマー。少し寄越しやがれ」
「え!?」
 アーマーは返答に詰まり、宝の山とホーンを交互に見やった。折角の自分の手柄を他のヤツに渡したくはない。しかし渡さないと痛い目をみそうだし……
「……おい」
 ホーンに低い声で呼ばれ、アーマーは諦めた。
「分かったよ……やるよ」
 しかし。
「これ、リンゴか?」
「へ?」
 思わぬ言葉をホーンから言われ、アーマーは一瞬なんのことか分からなかった。
 次の瞬間気付いて自分の持ってきた物に目を向ける。
「リンゴ……じゃないのか?」
 急に不安になってアーマーは聞き返した。ホーンは首をかしげて赤い山に顔を近付ける。
「リンゴって、こんなカタチだったか?」
「え……だって、赤くて丸いだろ?」
「まぁ、確かに赤くて丸いな……いいのか?」
「さぁ……?」
 自分が持ってきておきながら、アーマーも分からなくなって首をかしげる。言われてみると違うように見えるし、合っている気もする。
「?」
「?」
 ――と、その時。
「リンゴー!!」
「お!?」
「なんだ!?」
 突然サンダーが長首を起こし、赤い山の一部にかぶりついた。とうとうヤケでも起こしたか。
「あー!!」
「サンダー、てめぇっ!」
 アーマーが悲痛な叫びをあげ、ホーンが怒鳴る。サンダーはお構いなしに口の中の物ゴクリと飲み込んだ。
「あー……お宝……」
「リンゴんまーい!」
「てめぇっ、折角のお宝食っちまってどうすんだよ!!」
「……確かにマズくはねぇな」
「てめぇも食ってんのかよ!! ……パク」
 結局ホーンも味見する。
「んー、まあまあだな」
「サンダーが好きそうな味だ」
 そう言ってアーマーはサンダーを見た。案の定サンダーは至極幸せそうに赤い山をどんどん削って……
「「って、食うな!!」」
 二人に同時に怒鳴られ、サンダーは食べるのを止めてうなだれた。
「ったく……ああ?」
 最後の一人が帰ってきたのに気付き、ホーンは舌打ちした。帰ってきたのはもちろんプテラだ。偉そうな口を叩いておきながら、ホーンはリンゴを持ち帰れなかったのだ。絶対にそこを指摘され、馬鹿にされる。そう思っただけでもだんだん腹が立ってくる。
 だが現れたプテラは手ブラだった。
「なんだよてめぇ、手ブラか!」
 嬉しくなってホーンはここぞとばかりに指摘した。
「……」
 ところがプテラはホーンを一瞥しただけで特に反撃に出たりはしない。
「がっはっはっはっ!! 悔しくて言葉も出ねえか! 見ろ!! 俺が持ってきたヤツを!」
 いつもならすぐに言い返してくるプテラが何も言わないので、ホーンは調子に乗って自慢そうに赤い山を誇示した。
「それ持ってきたの、俺……」
 当然アーマーの呟きはさらっと流されたくらいにして。
 ――プテラは赤い山に目を向けた。
 そして事も無げに一言。
「トマトがどうした」
「「トマト!?」」
 アーマーが持ってきた赤くて丸いのは、リンゴではなくトマトだったのだ。
「なんだ、トマトが好きだったのか? だったら遠慮はいらねえから好きなだけ食ってな」
「……」
 愕然として黙り込む二人に、プテラは変わらぬ口調でさらりと言う。だがホーンへの嫌味なのは明らかだ。さらっとした口調が尚更嫌味に感じる。
 もちろんホーンは悔しくて仕方なくなり。
「アーマーてめぇっ!!」
 怒りの捌け口をアーマーにした。
「えっ!? 確かに間違いはしたが、なんでお前にそんなに……」
「うるせえっ!」
 アーマーの反論に聞く耳持たず。ホーンは側のトマトを引っ掴み、アーマーに投げつけ始めた。
「うわっ! ちょっ……やめ」
 べちゃ。
「おぶっ……っきしょっ……!」
 顔にトマトの直撃をくらったアーマーは、いい加減頭にきて自分もホーンにトマトを投げつけた。
 べちょ。
「うげっ……やりやがったなアーマー!」
 ひゅん。ぶちょ。
「うぎゅっ」
 ぼひゅ。
「うぎゃっ」
 ぶちゅ。
「へぶっ」
 食べ物を粗末にしてはいけません。
「リンゴー……」
 拗ねていたサンダーが恨めしそうに飛び交うトマトを眺める。
「野菜好きだからな、お前。ホレ、アレなら食っていいんじゃねぇか」
 トマト合戦は完全に無視して、プテラがホーンの持ってきた果物の山を指差す。
「アレ? いいのか?」
「いいから食っちまえ」
「おー」
 一転して上機嫌になったサンダーは果物の山に食いついた。
「あまーい!」
 野菜とは全く違うが、これはこれで口に合うらしい。
「へぇ、そんなにうまいか。どれ……」
 幸せそうに食べるサンダーの姿にプテラも興味をそそられ、試しに一口食べてみた。
「……ああ、結構イケるなコレ……モグモグ……ああウマイわ」
「プテラてめぇっ! ヒトが持ってきたモンを勝手に食うな!!」
 直後トマトがプテラの横面にヒット。ついでにスキを見せたホーンの横面にもアーマーの一球がヒット。
「アーマーてめぇ!」
「スキ見せたお前が悪いんじゃねぇか!」
 トマト合戦再開。
「……ちっ」
 ホーンに怒鳴り返すタイミングを失ったプテラは、舌打ちして果物の山に視線を戻した。隣でサンダーが無心に果物を食べ続けているのを横目でチラ見し、しばし思案する。
 ――これはこれでお宝にならねぇか?
 リンゴは時期外れで手に入らないというのなら、入る物を手に入れればいい。しかもこの果物というヤツは結構ウマイ。宝と言われるリンゴよりは劣るかもしれないが、それなりに金になるかも。
「おいサンダー」
「なんだー?」
「こいつをもっと集めてくるぞ」
「もっとか! おう!!」
 食事を中断させられたサンダーだが、このウマイ食べ物が更に手に入れられると知り、喜び勇んで返事をした。



 投げるトマトが残り一個となり、どちらが使うかでホーンとアーマーはしばらく睨み合っていた。
「……あれ?」
 ふとプテラとサンダーがいなくなっていることにアーマーが気付く。意識をそちらに取られた瞬間、最後のトマトがアーマーの顔で花を咲かせた。
「はっはっはっ、バカめ! よそ見なんかするから……」
「……二人がいねぇ」
「あ?」
 言われてホーンはプテラとサンダーがいたはずの場所を振り返る。確かにいない。
 ――が、それよりも。
「あー!! 俺が持ってきたヤツが!」
 果物の山が半分の大きさになっていた。
「くっそっ、アイツ等!!」
 宝ではなかったとはいえ、自分が持ってきた物を他の奴に(というかプテラに)取られるのは許せない。
「プテラの奴!! 戻ってきたらタダじゃおかねぇ!」
「っつーか、アイツ等何処行ったんだ?」
「知るか!!」
 怒り心頭で、ホーンは他の事に考えが及ばない。
「っつーか、リンゴ捜さないといけないんじゃねぇの?」
「……あ。あー……」
 さすがにホーンは我に返る。しかし。
「……リンゴって、どんなヤツだっけ……」
 深刻そうに彼は呟く。
「……赤くて丸いヤツ……」
 アーマーはそう返すが、最初からトマトと間違えたのだ。彼もどんな形だったか覚えていない。
「……」
 ガイスターの秘密基地にビミョーな沈黙が流れる……





 結局先程のサンダーのように二人がフテ寝していると、やがてプテラとサンダーが帰ってきた。
 たくさんの果物と共に。
 ガイスターロボにも手伝わせ、たちまち基地内は果物でいっぱいになった。
「こいつら皆リンゴじゃねーじゃねーか」
 プテラの意図が分からずアーマーが尋ねる。その横でサンダーが「お宝いっぱーい♪」とはしゃいでいる。お宝はリンゴじゃなかったのか?
「物には時期っつーモンがあってな。リンゴは時期じゃねぇから無いんだとよ」
「へぇーっ、そうだったのか……で、こいつ等は?」
「リンゴよりは価値が下がるが、これはこれで売れるんじゃないかと思ってな」
「うまいぞー」
 サンダーが得意げに言う。
「へぇー、どれどれ」
 手身近な果物に手を伸ばそうとして、それをぴしゃりとプテラに叩かれた。
「食うんじゃねぇよ」
「いいじゃねぇか、少しぐらい……」
 そう言って結果宝の全てを駄目にするのは毎度のこと。それをプテラは警戒したのだが。
「……ああ?」
 気付くと一区画がなくなっている。
「だから宝を食うんじゃねぇ、サンダー!!」
 プテラは怒鳴りながらサンダーを振り返った。しかしサンダーはきょとんと首をかしげる。
 一呼吸分の思案による沈黙。
「――貴様かホーン!!!」
 プテラの蹴りがホーンの頭にヒットした。
「うるせぇっ!! てめぇ、俺が持ってきたヤツ食ったじゃねぇか!!」
「アレとコレは別だ! コレはお宝って言ってんだろうが!!」
「てめぇの都合なんか知ったことか!」
「何だと!?」
「やるか!?」
 毎度お馴染み険悪ムード。
 その隙にアーマーがつまみ食いを始めた。
「おおっ! イケるな、コレ」
「んまいんまい」
 次々と口に放り込み始めるアーマーを見て、自分も!とサンダーも果物を頬張る。
「ガーっ!! てめぇら!!」
 気付いたプテラが怒鳴ったとたん。
「おらぁっ!」
 先程のお返しとばかりにホーンがプテラにボディアタック。
「ごふっ」
 べしゃぁっ
 直撃を受けたプテラは見事に果物の海にダイブした。もちろんお宝が無事に済むワケがない。
「……」
 ぷっちん
「てめぇっ!! 今度という今度は許さん!」
 完全にキレたプテラがクチバシで攻撃。果物で足場が悪くなっているホーンは、かわしきれずに目にくらった。
「ぎゃっ! っこの……っ! いい度胸だ、覚悟しやがれ!!」
 とうとうお宝無視の大戦争勃発! その横では楽しそうにアーマーとサンダーが果物食べ比べ大会に発展させていたり。
「この丸いピンクんまい♪」
「おい、混ぜてもウマイんだな! すげぇお宝だぜ」
 お宝は無惨にスプラッタと化すか、腹の中へと消えて、見る間にどんどん減っていく。加えてそれを止める者はなかった。
 そして、トドメが――
 ホーンに吹っ飛ばされたプテラの体がサンダーにぶつかった。
「うおっ」
 そして留まらずにアーマーをも巻き込む。
「うがっ」
「このボケ共、邪魔だ!」
 二体を足蹴にして体勢を整えたプテラは、魔の捨て台詞を吐いて再びホーンに襲い掛かった。
「……」
「……ヤバ」
 アーマーは身の危険を感じて避難を試みた。しかし果物の無惨な海がそれを阻む。
 間もなく今度はホーンの体が飛んできた。プテラにボディプレスをかまそうとして、かわされたのだ。標的を失った攻撃は見事アーマーに直撃。
「えぐっ」
「ウロチョロしてんじゃねぇ、ボケ!」
 ホーンも更に魔の捨て台詞を吐いてプテラに向き直る。
 アーマーはサンダーの背後に青い炎が揺らめいているのが見え――死を覚悟した。“神に祈る”とはこういうことを言うのだと、頭の片隅で思った。

 さぁ、皆で声を揃えて叫んでみよう! せーのっ、

「俺はボケじゃねぇ――――――――っ!!!!!!!!」










「……で。お宝を駄目にした、と」
 地面でうめく四将を見下ろし、コウモリは呟く。
 超音波で黙らせられたことに加え、自分達のしたことの愚かさを自覚した四将は何も言い返せない(サンダーは怒られたことがショックなだけ)。
「……せめてダイノガイスト様の分を残しておこう、とも思わなかった、と」
「……」
 後半はサンダーの大乱闘だけだったので、思考そのものが失われていたのだが……そんな言い訳など通用するはずもなく。
「馬鹿者ー!!」
 超音波再び。
「ぐぎゃーっ!」
「そんなことだからお宝も手に入れられないし、エクスカイザー共にも煮え湯を飲まされるのだ! 何度繰り返せば気が済むーっ!」
 コウモリの怒りの声が基地内にこだまする。四将はうなだれたまま……というか、連続超音波攻撃のせいで、言い返すどころか、身動き取れない。
「ガイスターとしての誇りはないのか!? ダイノガイスト様の手足にすら満足になれないじゃないか! ダイノガイスト様がどれだけお前達に失望していると思っている!?? ダイノガイスト様はお前達の無能さに頭を痛めておられる! 少しはお役に立とうとは思わないのか! だいたいお前達はあまりにも単純思考で、学習や進歩というものが全くない! 地球に来てからというもの、醜態ばかりさらしおって、悔しいと思う頭すらないのか!」
 くどくどくどくど。
 コウモリの説教は止まらない。
「……」
 最初のうちは四将達は黙って聞いていた。しかし正論といえど、虎の威を借る狐の如く、普段からダイノガイストの威を借りて威張り散らすだけのコウモリに、こうも長々と説教される覚えはないと、内心怒りを蓄積させていき……
「だ――――――っ!!!」
 とうとうプテラがキレた。
「そんなに偉そうに言うんだったら! てめぇが働いてみろってんだ!!」
「なっ!」
 イキナリな反論にコウモリは絶句した。
「だいたいいっつもてめぇはボスの威厳借りて俺達に説教かますだけじゃねぇかてめぇもガイスターの一員なら役に立ってみろってんだよ偉そうな口ばっかききやがってそのチビっこい体でエクスカイザー倒せとまでは言わねぇからそこまで言うんだったら果物の一つや二つや三つや四つ持ってきてみろってんだよ俺達がどんだけ地球にてこずらされてるか分かりもしねぇで好き勝手にほざいてんじゃねぇよふざけんな!!」
 負けじとばかりにプテラは言い連ねた。彼と同じ怒りを募らせていた他の三人も「そーだそーだ」と賛同する。
「こ、こっちは調査と伝令が仕事だ! お前達と一緒にするな!!」
 すかさずコウモリは言い返すが、当然聞く耳持ってはもらえない。話の流れが変な方へ進み始めている……
「調査だぁ? そんなのやってるトコ見たことねぇよ!」
 プテラの勢いに便乗してアーマーがも叫ぶ。
「はっ! 伝令なんてホーンにでもできらぁ!」
「まったくだぜ!! ……って、おいちょっと待てプテラ、それどういう意味だ!」
「おお、気付いたのか」
「てめぇ、どれだけ俺様をバカにすりゃ気が済む!!」
「事実を言ったまでだ。……逃げんのか?」
 いつもの二人がいつものようにケンカを始めた隙に逃げようとしたコウモリだったが、目ざとくプテラに気付かれた。
「いや……その……」
「お宝取りに行くのか?」
 サンダーが首をかしげて言う。おそらく彼に他意はない。だがその無邪気さがかえってコウモリを追い詰めた。
 いつものように強気な態度でダイノガイストの元へ戻れば良かったのだ。プテラに勢いよく反論された時点で、彼の心は既に敗者のそれだった。
 四将の視線がコウモリを射抜く。

 ――もはや彼に選択権はなかった。



END
ガイスター小説第二段、『計算』の続きでした。
何故か分かりませんが、
完成するまでかなりの時間を要しました……
ともあれ、終わって良かったvvv

と言いつつ、もう少し続きます。

『コウモリと果物』へGO!

勇者−TOP

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